よみがえった高瀬しぼり
復元された日本最古の藍染め絞り木綿
現代の私たちは、化学染料を使って大量に生産された服を安く手軽に買うことができます。ほんの数十年前までは、草木を使って染められた服を、何度も染め直したり縫い直したりして、大切に使っていました。
江戸時代の記録には、肥後の特産品として「高瀬絞り木綿 当所より始」とあります。かつて玉名でつくられていたこの独特の絞り木綿は、何でも機械化され、化学染料が流通するようになる中で、姿を消し、多くの謎を残していました。
(画像:下川さんが復元した高瀬しぼり木綿)
染織工芸家の下川冨士子さんは、平成7年から幻の「高瀬しぼり」の研究を開始。多くの文献を読み、高瀬のお年寄りや日本中の色んな人に話を聞き、試行錯誤を重ねました。その結果たどり着いたのが、「高瀬しぼりは日本最古」という答えと、復元の成功です。高瀬しぼりの柄は、記録上には「朝顔のよう」としか書かれていません。しかし、お年寄りは昭和の中ごろまで下着として使用した「ゆもじ」の柄が、この復元された柄のようなものだったと記憶しています。下川さんは論文を書き、その研究成果は日本の染織界で広く認められました。
今では「鎌倉で有名な染織家から高瀬しぼりが日本最古だと聞いた。研究に尽力している方々に感謝したい」との声が玉名市出身者から寄せられるほど染織界に知られている高瀬しぼり。下川さんは、日本の衣文化の原点「刺し子」の歴史や技法を探り続ける刺し子研究家であるとともに、高瀬しぼり木綿の復元研究など、多方面で活躍中です。
染織工芸家 下川冨士子さん(82歳、築地)
「染めは、高瀬に始まった。これを地域おこしに活かさない手はないと思うんです。」
「高瀬しぼり体験会」歴史博物館こころピア体験学習
平成30年11月18日、多くの声に応え、高瀬しぼり木綿研究会によって開かれた体験会。
定員を超える29人が参加し、高瀬しぼりの歴史や技術を学び、赤・青・紫の染料で巾着を染めました。布を紐できつく縛り、「巻き上げ絞り」技法で実践。完成し広げた瞬間には「できた〜!」と喜びの声が会場中に。
体験会を終えると、参加者みんな「また体験会をやってほしい」「どうにかしてこの高瀬しぼりを広められないか」と話が弾んでいました。
高瀬しぼり木綿研究会
約20年間、高瀬しぼりの研究や作品づくりに取り組んでいます。小学校の体験授業や一般向けの体験会を開催するなど、多くの人に高瀬しぼりの歴史や技術を知ってもらうために活動中です。
会長 下川冨士子
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