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企画展 「高瀬絞り木綿の源流とその展開」

更新日:2005年1月1日

高山彦九郎の『筑紫日記』に、寛政4年(1792)肥後藩校時習館の居寮長中山昌礼から「木綿も高瀬にて織り始るといふ」と伝聞したことが出ています。高山彦九郎は、寛政の3奇人として有名な勤王家です。

綿毛の画像

木綿の生産の起源は古く紀元前までさかのぼります。木綿織は、世界4代文明の一つであるインダス文明独自のものとして、染色の技術と共に高度な発展を遂げました。

木綿の栽培と綿布の生産が中国に伝えられるのは、これからずっと時代の下った唐の時代(8世紀)で、明の時代の初め頃(14世紀)になると本格的に発展をします。朝鮮へも中国から伝わり、14世期末の李朝期には本格的に生産が行われるようになります。そのころ、日本ではまだ木綿生産は始まってはおらず、朝鮮からの贈り物や輸入品として手にいれた木綿は、貴重なものでした。

供物奉納帳(光専寺文書)の画像

あまりたくさん日本が輸入するので、朝鮮では輸出を禁止します。中国(明)も禁止しているので、密貿易で買い付けることになりました。そうなると、海外との貿易港として栄えている高瀬の港へと続々と入ってきたと思われます。同じく貿易港として栄えた伊倉・光専寺の文書には寛文7(1661)年から延宝3(1673)年の間に、葬儀の跡の寺への供物として「布子五四、織木綿五三反、帷子三二、羽黒切三〇、黄とん二三、袷二一、小立一一、一重物四、小ぶし三」となっていて、木綿類の普及状況が窺われます。

木綿布を糸でくくった後に藍などで染め、糸をほどくと縛ってあった部分が染まらずに白く浮き出ます。こうした方法で様々な絞りの模様ができるのです。藍染はインドで始まり、日本には天平時代(8世紀)の絹の絞りが残っています。その頃庶民の衣料は麻でしたが、15世紀ころ暖かい木綿に代わります。労働着として丈夫でもあり、毒虫除けにもなる藍染が普及していくのです。

寛永15(1638)年編集の俳諧作法書『毛吹草』に、「高瀬絞り木綿」と「豊後絞り木綿」の二つがでてきます。その説明に「高瀬絞り木綿 当所より始」とあり、日本の絞り木綿が高瀬から始まったことが裏付けられます。

天保時代の終わり(1840年ごろ)に作られた『肥の後州名所名物数望附』に「高瀬絞り木綿 名代にて多く製す 見事也 所々へ出る」とあり高瀬絞り木綿の発展ぶりがうかがえます。


日本物産字引の画像

明治8年の『日本物産字引』の肥後の項に「絞り木綿 高瀬より製す」とあります。明治16(1883)年の『熊本県統計表』の名産の項に「絞木綿 玉名郡高瀬町」とでてきます。このころまでは名産であったのでしょうか。高瀬絞り木綿が見られる最後の資料です。

復元高瀬絞り木綿の画像

現在高瀬絞りがどんな柄であったかを書いた文献はありません。しかし、お年寄りは昭和の始めごろまで労働着として使用した「ゆもじ」の柄がこの復元図のようなものであったことを覚えています。

豊後絞りの柄の画像

絞り木綿は、さらに高瀬から肥後藩領鶴崎(大分市)に近い竹中伊豆守の領分の豊後門田村に伝わりました。豊後絞りというのはこの柄を小さくしてたてよこに並べたものが基本のようです。

現在絞り木綿の最大の産地は名古屋市内の有松・鳴海です。伝承では、名古屋城築城の慶長15年ごろ竹田庄九郎が有松絞りを始め、また正保・慶安(1644〜50)のころ豊後の絞り木綿を竹中家の医者三浦玄忠の妻が伝えたことになっています。絞り木綿は有松で大発展を遂げ、さらに西の方は博多・甘木へ、東の方は浅舞・白根などへ広まっていきました。

 (写真の高瀬絞りの作品は、下川冨士子氏より寄贈されたものです)

展示期間

平成8年2月9日(金曜日)〜平成8年4月29日(月曜日・祝日)  

 

チラシ

チラシの画像


※過去の企画展の為、チラシに掲載の情報の内、概要・趣旨などのみ記載しております。

 

図録

図録の表紙画像

平成8年2月9日発行 A4版白黒17頁 販売価格300円

購入方法については刊行物のご案内をご覧ください。


 


追加情報

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電話番号:0968-74-3989
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