企画展 「同田貫」
小代焼きとならび玉名を代表する美術工芸品のひとつに同田貫の刀があります。「同田貫」いうのは、かつて玉名で鍛刀した刀工(刀鍛冶)の一派が名乗った派名のことです。
熊本の刀
かつて肥後北部を支配していた菊池氏の抱え工として、「延寿」なる刀工一派が活躍していました。延寿とは、今から720年ほど前、菊池氏が山城国(現在の京都府南部)より招いた「来派」の刀工国村を祖とする刀工一派です。同田貫は、その延寿の分派として起こったのが始まりだといわれています。同田貫の発祥は現菊池市稗方に遡りますが、その後、正国・清国の兄弟をはじめ兵部・又八等の刀工達が玉名に移住して鍛刀しました。
同田貫の発祥
玉名市亀甲で鍛刀した同田貫の初代を正国(のち上野介)といい、多くの作刀を遺しています。その兄とされる清国も玉名市伊倉で鍛刀しますが、こちらは作刀も少なく鍛冶職は清国限りで廃業し、民籍に入ったと思われます。同田貫の作刀は豪刀武用刀として知られ、加藤清正の入国後は抱え工となり、また熊本城の常備刀とされ全盛期を迎えます。しかし、加藤家が改易となり、細川忠利の入国後は衰亡し、その鍛刀技術も一時失われます。
同田貫の復興
これを再興したのが上野介正国から数えて第9代目になる正勝です。正勝は薩州正幸より鍛刀の術を習得し、第10代宗広・第11代宗春に至り新々刀同田貫を繁栄させます。正国以後でもっとも有名なのはこの宗広で、通称を寿太郎・延寿太郎と称します。肥後の新々刀期(1772年以後)を代表する刀工の一人で、繁根木八幡宮に奉納されている刀(熊本県指定重要文化財)はこの宗広の作です。
同田貫の特徴
「兜割り正国」に代表されるように、剛健にして折れず曲がらず、美装よりも実用本位に鍛えられたところに同田貫の特徴があると言えます。
同田貫と銃砲
同田貫一派は刀鍛冶として有名ですが、幕末の頃、銃砲もつくっています。史料には、坂下手永(現在の玉名市中心付近)において同田貫鍛冶が鉄砲をつくったことや、南関手永(現在の南関町付近)で伊倉同田貫の流れをくむ惣庄屋木下初太郎親子が鉄砲製造を推進したことなどの記録が残っています。
史跡・名刀同田貫跡
玉名市の中心部を通る国道208号線沿いに「同田貫跡」と大きく刻まれた石碑が建っています。また、その隣に、初代上野介正国、9代正勝、10代宗広等を中心とする刀工一門の墓碑が残ります。
過去の同田貫展
本館では、過去5回(巡回展を含めると6回)にわたり同田貫に関する企画展を行っています。
企画展名 | 開催期間 |
---|---|
郷土の刀剣 同田貫 | 平成9年12月9日(火曜日)〜平成10年1月18日(日曜日) |
肥後の刀剣 延寿から現代刀工まで | 平成12年4月18日(火曜日)〜平成12年5月28日(日曜日) |
財団法人熊本県伝統工芸館所蔵品巡回展 -肥後象嵌と同田貫- | 平成13年9月4日(火曜日)〜平成13年10月21日(日曜日) |
同田貫2 -歴史に名を連ねる豪刀- | 平成16年4月7日(水曜日)〜平成16年5月16日(日曜日) |
同田貫 -豪刀と幻の銃- | 平成17年5月12日(木曜日)〜平成17年6月12日(日曜日) |
同田貫とその時代 | 平成29年1月14日(土曜日)〜平成29年2月19日(日曜日) |
チラシ
肥後の刀剣 延寿から現代刀工まで
同田貫2 -歴史に名を連ねる豪刀-
同田貫 -豪刀と幻の銃-
同田貫とその時代
図録
購入方法については刊行物のご案内をご覧ください。
郷土の刀剣・同田貫
平成9年12月9日発行 A4版 白黒16頁 販売価格300円
肥後の刀剣
平成12年3月31日発行 A4版 白黒16頁 販売価格300円
同田貫2 -歴史に名を連ねる豪刀-
平成16年3月31日発行 A4版 白黒24頁 販売価格500円
同田貫 豪刀と幻の銃
平成17年5月12日発行 A4版 白黒20頁 販売価格400円
同田貫とその時代
平成29年1月14日発行 A4版 白黒24頁 販売価格500円
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